Savings PlansによるAWSコストの削減
目次
AWSのSavings Plansとは?
AWS(Amazon Web Services)では、利用者にメリットがある様々な割引プランが用意されており、簡単に利用できるようになっています。本記事では、2019年11月と比較的新しく提供され始めた割引プランであるSavings Plansについて解説していきます。
AWSインスタンスの料金体系は基本的には従量課金であり、使った分だけ課金されるようになっていますが、Savings Plansは、1年間または3年間という単位で、1時間につき何ドル分AWSを使うという宣言を行い、契約をすることによって、対象サービスの利用料が割引になるというサービスです。
なお、このとき宣言する料金は、「割り引かれた後の料金」です。2022年6月現在、Compute Savings Plans、EC2 Instance Savings Plans、Amazon SageMaker Savings Plansの3種類が利用可能ですが、本記事ではCompute Savings Plans、EC2 Instance Savings Plansを中心に解説していきます。
Compute Savings Plans とは
Compute Savings Plansは、EC2インスタンスやLambda、ECS Fargateに対して適用されるSavings Plansです。EC2やFargateには様々なインスタンスファミリー(m5、t3など)、インスタンスサイズ(medium、largeなど)、アベイラビリティーゾーン、リージョン、プラットフォーム(OS)、テナンシーを選択することができますが、どのような選択をしていても、割引が適用されます。つまり、対象となる様々なリソースの利用費はすべて一律で安くするのがこちらのSavings Plansになります。
Compute Savings Plansはどのようなケースに有効?
AWSにおいては要件によって様々なサービスを使い分けることになります。そのため、1つのアカウントにEC2、Lambda、Fargateなどの複数のサービスを組み合わせて利用しているようなワークロードであったり、世界各地のリージョンを利用していたり、といった場合には非常に割引効果が高いサービスとなっています。
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EC2 Instance Savings Plans とは
EC2インスタンス対象のSaving Plansになります。具体的には、利用するリージョンとインスタンスファミリーを指定することで、その他の設定項目(インスタンスサイズ、アベイラビリティーゾーン、プラットフォーム(OS)、テナンシー)に関わらず割引が適用されます。Compute Savings Plansと比較して、割引対象とするサービスをEC2に限定する代わりに、Compute Savings Plansよりも割引率の高いプランになります。
EC2 Instance Savings Plansはどのようなケースに有効?
特定のリージョンにおいて、多くのEC2を運用しているケースに有効です。具体的には限られたファミリーのインスタンスでテスト環境を複数利用している場合や、特定のインスタンスファミリーでAutoscalingを行うようなアプリケーションを運用している場合に効果が高いと考えられます。
SageMaker Savings Plans とは
SageMaker Savings Plansにも軽くふれておきたいと思います。SageMaker Savings Plans とは、SageMakerだけを対象とするSavings Plansです。SageMakerとは、AWSが提供する機械学習の統合プラットフォームサービスです。Compute Savings Plansと同じでリージョンを区別しませんが、SageMakerのサービスの中でのみ利用可能なSavings Plansとなっています。
AWS Saving Plansのメリット
AWS Savings Plansの最大のメリットは、楽に利用料を安くできるという点です。まず、「楽に」という観点から考えてみます。他の(購入方法による)AWSの割引プランであるリザーブドインスタンスやスポットインスタンスは、インスタンスの購入や更新、入札価格の設定等、何かしら対応が必要なサービスになっていました。
そのため、運用負荷と割引額がトレードオフになっていた、という点が挙げられます。一方でSavings Plansは、設定を投入すればLambdaやEC2など、使用しているサービスに幅広く適用されます。したがって、リザーブドインスタンスやスポットインスタンスを利用する場合と比較して運用が簡潔になっています。
次に、「安く」という観点で考えてみます。Savings Plansを利用すると、EC2、Fargate for ECSの利用料を最大で72%削減でき、Lambdaの利用料を最大で17%削減できます。リザーブドインスタンスの最大割引も7割程度なので、Savings Plansを利用することでリザーブドインスタンスに匹敵する割引額を得ることができます。
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リザーブドインスタンスとSavings Plansの比較
AWSにおける同様な割引サービスとして、リザーブドインスタンスが挙げられますが、リザーブドインスタンスとSavings Plansは比較するとどのような違いがあるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
Savings Plansのほうが優れている点
Savings Plansのほうが優れている点としては、リザーブドインスタンスよりも圧倒的に柔軟性がある点が挙げられます。Savings Plansでは、コミットする期間(1年 or 3年)と支払いオプションをまず指定し、あとは「1時間あたり何USD使うか」を指定すればすべての対象に割引料金が適用されます。
一方で、リザーブドインスタンスは、そのほかにもインスタンスサイズ、アベイラビリティーゾーン、プラットフォーム(OS)、テナンシーを指定する必要があります。また、リザーブドインスタンスは、インスタンスタイプを変更することがコンバーティブルタイプでないと難しいため、その点でも非常に優位です。また、加えて、リザーブドインスタンスは設定項目が多い分、設定ミスが生じやすい、という副次的なデメリットも存在します。
リザーブドインスタンスのほうが優れている点
リザーブドインスタンスのほうが優れている点としては、キャパシティ予約と対象の豊富さが挙げられます。リザーブドインスタンスを購入すると、キャパシティ予約をすることができ、万が一AWS側でリソース不足となった場合であっても確実に起動できるというメリットがあります。ただし、Savings Plansでもオンデマンドキャパシティ予約を行うことで同様のメリットを享受することができます。また、リザーブドインスタンスはAmazon RDS、ElasticSearch(OpenSearch)、DynamoDB、ElastiCache、DynamoDB、Redshiftなどのサービスにも対応しており、対応サービスがSavings Plansよりも広いことが優れています。
まとめ
Savings Plansやリザーブドインスタンスを有効活用することで、AWSの利用料を大幅に削減することができます。一方で、Savings Plansを利用する場合はリザーブドインスタンスを利用する場合と同様に多少の注意事項があります。例えば、リザーブドインスタンスからSavings Plansへの変更はできず、逆も不可能であり、事前にリザーブドインスタンスを買ってしまっていた場合は割引の恩恵を受けることができません。
したがって、Savings Plansを利用する場合は自身のAWSアカウントにおいて、どのような要件で、どのような割引プランを使っているかを検証したうえで、Savings Plansを申し込むようにしましょう。利用を進めるうえで不明な点や設定上の不安な点がある場合は、詳しいAWS専業のベンダーに問い合わせるのもいいでしょう。