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AWS活用支援コラム

Amazon ElastiCacheでシステムを高速化する

Amazon ElastiCacheとは?

Amazon ElastiCacheは、AWS(Amazon Web Services)が提供するフルマネージド型のインメモリーキャッシュサービスです。Amazon ElastiCacheは仮想サーバーを提供するEC2や、データベースサービスであるRDSと異なり利用する機会が比較的少ないサービスです。しかしながら、Amazon ElastiCacheはデータベースやバックエンドシステムにおけるデータ読み込みの速度を大幅に向上させ、アプリケーションのパフォーマンスを改善するという重要な機能を持っています。

本記事では、Amazon ElastiCacheの概要、パフォーマンス向上への貢献、そしてその2つの主要なエンジン「Memcached」と「Redis」について解説します。

Amazon ElastiCacheとパフォーマンス向上

インメモリーキャッシュとは?

インメモリーキャッシュを理解するために、まずは「キャッシュ」について解説します。キャッシュとは、再利用するために一時的にデータを保存しておく仕組みのことです。身近な例でいうとWebブラウザなどにも利用されており、よくアクセスするWebサイトのデータをキャッシュとして保存しておくことで、Webサイトへのアクセス時間を短縮します。インメモリーキャッシュは、キャッシュデータをメモリ(RAM)に一時的に格納する技術のことを指します。

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Amazon ElastiCacheの効果

Amazon ElastiCacheを使用する主な目的は、アプリケーションのパフォーマンスを向上させることです。

通常のアプリケーションでは、データベースにデータを保存し、アプリケーションサーバーやWebサーバーからデータベースへデータをクエリして利用しています。データベースへのアクセス頻度が多いとデータベースに負荷がかかってしまい、アプリケーションのレスポンスが落ちたり、障害が発生したりします。インメモリーキャッシュをデータベースの前段に配置すると、頻繁にアクセスされるデータをキャッシュとして保存しておくことができます。これにより、データベースへの負荷を大幅に軽減するとともに、レスポンスタイムを短縮することが可能になります。特に、読み取りが多いアプリケーションや、大量のデータを扱うサービスにおいて、その効果は顕著です。

また、Amazon ElastiCacheは、簡単にスケールアウト(水平拡張)が可能で、使用するリソースに応じて容易に拡張・縮小することができます。したがって、運用に関する負荷を極力減らしながら、アプリケーションにインメモリーキャッシュを導入することができます。

2つのエンジン「memcached」と「Redis」

主要なインメモリーキャッシュのオープンソース製品として、「memcached」と「Redis」があり、AWSでは両方が提供されています。これらは共に高速なデータアクセスを実現するためのテクノロジーですが、利用シナリオや機能面で異なる特徴を持っています。それぞれどのような特徴があるのか、見ていきましょう。

Memcached と Redis の特徴とは?

Memcachedは、シンプルさが特徴の高性能な分散型メモリオブジェクトキャッシングシステムです。大規模なデータセットに対する高速な読み取り/書き込みが必要な場合に適しており、複数のサーバー間でキャッシュを分散させることができます。

一方でRedisは、Memcachedに比べて高度なデータ構造をサポートしており、キー/バリューストアの他にリスト、セット、ハッシュといったデータ構造を扱うことができます。また、データの永続化、トランザクション、パブ/サブ機能も提供しており、より複雑なアプリケーションに対応可能です。

Memcached と Redis の比較

Memcachedはシンプルなデータを扱うがゆえに、マルチスレッド(アプリケーションが複数の作業(スレッド)を同時に実行する技術のこと)のアプリケーションにも対応しています。

一方で、Redisは複雑なデータを扱えるほか、スナップショットやレプリケーションといった複雑なアーキテクチャにも対応しています。

シンプルなデータであればMemcached、複雑なデータや、災害対策などのアーキテクチャを採用したいのであればRedisを選択するといいでしょう。

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なぜAmazon ElastiCacheを利用するのか?

RedisやMemcachedは、設定や管理が複雑であり、高可用性やスケールアウト、バックアップ、監視といった運用作業には専門知識が必要です。例えば、Redisを自前で運用する場合、データの永続化設定、メモリ管理、クラスタリング構成など、多くの設定を最適化する必要があります。また、障害発生時の迅速な復旧や、パフォーマンスのモニタリングといった運用上の課題も発生します。これらの作業は時間とリソースを大きく消費するため、特に小規模なチームやスタートアップにとっては負担となることが少なくありません。

Amazon ElastiCacheはマネージドサービスであるため、複雑な運用や設定項目をすべてAWSにおまかせすることができます。また、セットアップ、構成、管理がAWSのコンソールまたはAPIを通じて簡単に行えるため、導入も容易となっています。Amazon ElastiCacheを利用することで、導入にかかるイニシャルや運用コストを大幅に軽減することができます。

Amazon ElastiCacheのユースケース

Amazon ElastiCacheのユースケースには、以下のようなものが考えられます。

  • Webアプリケーションの高速化

    Webアプリケーションやウェブサイトでは、データベースからのデータ取得に時間がかかることがパフォーマンスのボトルネックになりがちです。ElastiCacheを使用して頻繁にアクセスされるデータをキャッシュすることで、データベースへの負荷を減らし、応答時間を大幅に短縮することができます。
  • リアルタイムアプリケーション

    チャットアプリやゲーム、リアルタイム性が求められるアプリケーションでは、低遅延でデータを処理することが求められます。そのため都度データベースにデータをクエリすることは、アプリケーションにとって致命的になるケースも存在します。ElastiCacheはこれらのアプリケーションにおいて、リアルタイムでのデータの取得や更新を高速に行うことを可能にします。
  • セッションストア

    webアプリケーションやモバイルアプリケーションでは、ユーザーのセッション情報を管理する必要があります。ElastiCacheにセッション情報を保存しておくことで、セッション情報の読み書きを高速に行い、アプリケーションの利用者に対してより良い体験を提供することができます。
  • マイクロサービス間のデータ共有

    コンテナなどを多用したマイクロサービスアーキテクチャにおいて、異なるサービス間でデータを共有する必要がある場合、ElastiCacheは共有データストアとして機能することができます。これにより、サービス間でのデータ同期を高速かつ効率的に行うことが可能となり、システム全体のレスポンスタイムの改善に貢献します。

まとめ

Amazon ElastiCacheは、アプリケーションのパフォーマンスを向上させるための強力なツールです。MemcachedとRedisの2つのエンジンは、異なる特性と機能を持ち、アプリケーションのニーズに応じて選択することができます。パフォーマンスの向上は、最終的により良いユーザー体験へとつながり、サービスの成功に不可欠な要素となります。アプリケーションの構成や導入の方法については、専門知識を有したベンダーに相談してみるのもいいでしょう。