AWS移行ではマネージドサービスを活用しよう
目次
マネージドクラウドとは何か?
近年、様々な企業でITシステムをAWS(Amazon Web Services)上に構築する動きが加速しています。そのような状況の中で、「マネージドサービス」という考え方が復旧してきています。マネージドサービスとは、マネージド(Managed:管理)という言葉が示す通り、クラウド事業者などによって運用・管理されているクラウドサービスを指します。
具体的には、SaaS(Software as a Service)やPaaS(Platform as a Service)など、サービス提供者側がクラウド基盤を管理しており、利用者側で管理する必要がないようなクラウドサービスを、マネージドサービスといいます。
マネージドとアンマネージドの違い
マネージドとアンマネージドの違いは、利用者の責任範囲にあります。AWSやMicrosoft Azureなどの大手パブリッククラウドでは、「責任共有モデル」といい、利用者側と、クラウドサービス提供者側が管理する範囲が明確に定められています。
例えば、IaaS(Infrasructure as a Service)形式で利用するサービスであれば、データセンターや物理サーバーなどはクラウドサービス提供者側が管理(マネージド)していますが、OSやソフトウェアに関する運用監視やアップデートなどの保守作業は利用者自身が行う(アンマネージド)となっています。
一方で、PaaSやSaaSでは、OSやソフトウェアに関する運用監視やアップデートといった作業はクラウドサービス提供者側が行う(マネージド)のため、利用者が管理する範囲(アンマネージドの範囲)は狭くなっています。
AWSにおけるマネージドサービス
AWSにおいて、どのようなマネージドサービスがあるのか、代表的なサービスを記載していきます。
AWSの代表的なマネージドサービス
- RDS
RDS(Amazon Relational Database Service)とは、その名称のとおりAWSのリレーショナル型のデータベースです。OSにMySQLやPostgreSQLなどのデータベースエンジンがインストールされている状態で提供されるため、すぐにデータベースが利用できるサービスになっています。また、データのバックアップやサーバの冗長化といった機能についても、AWS側で提供されています。 - Elastic Beanstalk
Elastic Beanstalkはサーバー、OSの設定から、ロードバランサーなどのネットワーク関連の設定までアプリケーションの開発に必要な一連の環境を提供し、アプリケーションの構築を簡単にするプラットフォームです。 - S3
S3(Simple Storage Service)とは、AWSが提供するオブジェクトストレージサービスの一種です。通常のストレージでは、筐体の運用監視や、保存データ量の上限監視などが必要になりますが、そのような運用監視をAWSがほとんどすべて行っているため、利用者はデータ容量を気にすることなく利用することができます。また、データの冗長化などもAWS側で行っており、データの耐久性は99.999999999%となっています。 - Lambda
Lambda(ラムダ)は、SaaSのなかでも特に利用者側で管理する範囲が少ないFaaS(Function as a Service)とよばれるサービスです。クラウド上にプログラミングコードを定義しておくだけで、アプリケーションの実行が可能になります。そのため、利用者が管理する範囲(アンマネージドの範囲)は、アプリケーションのコードと多少のLambda関連の設定のみ、ということになります。
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マネージドデータベースRDSの特徴とメリット
マネージドサービスはどのようなメリットがあるのでしょうか。代表的なマネージドサービスである、RDSを例に見ていきましょう。
データベースをEC2の上に構築した場合
RDSではなく、EC2にデータベースを構築した場合は、OSから上のレイヤは利用者側で管理を行う必要があります。そのため、OSの稼働監視や、データの同期、バックアップ、障害時の切り替えといった設計や管理はすべて利用者側で行っていく必要があります。
マネージドサービスのRDSを使った場合
RDSを利用した場合は、OSと、ある程度のデータベースエンジンの設定はAWS側が行います。そのため、利用者としては運用で考慮すべき項目を少なくすることができ、データベースの設計やアプリケーション開発にリソースを注力することができます。
RDSで可用性を担保する「マルチAZ」
AWSでは、AZ(Availability Zone)とよばれるデータセンターが、1つの地域に複数設置されています。AZに配置するサーバを分散させることで、システムの冗長性を簡単に確保することができます。RDSを利用した場合、Multi-AZオプション(複数のAZを利用するオプション)をONにすると自動的に2つのAmazon RDSを異なるAZに構築してくれます。
これにより、自動的に他のデータセンターにデータのバックアップが開始されるほか、片方のAmazon RDSにトラブルが生じた場合でも、自動的に切り替えがおこなわれます。このように、Multi-AZの機能を利用することでシステムの冗長性を簡単に確保することができます。
デメリットがないわけではない、MySQLをRDSで使う時の制限
RDSでもデメリットがないわけではありません。RDSはある程度のデータベースエンジンの設定はAWS側が行うため、利用者側でゼロから設定を行うことができません。また、MySQLであれば、データベースエンジンのバージョンも指定されている場合があります。したがって、めったにないケースではありますが、要件によってはRDSが適さない場合も考えられます。
やはり大きなマネージドサービスのメリット
オンプレミスにデータベースを構築する場合を考えると、データセンターの契約から、物理サーバの設置や運用監視が必要となるため、高い運用コストが生じてしまいます。また、データベースの利用が増加すると、ディスクの追加作業や、場合によってはデータセンターに新規のディスク装置を設置するなど、増設にも時間がかかります。
RDSではなく、EC2にデータベースを構築した場合も、OOSの稼働監視や、データの同期、バックアップ、障害時の切り替えといった設計や管理はすべて利用者側で行っていく必要があることは前述した通りです。しかし、マネージドサービスだと、データセンターや物理サーバの管理はもちろんのこと、サーバやデータベースエンジンのアップデートもAWSが行うため、運用にかかるコスト、特に人的なコストを大幅に下げることができます。
加えて、性能を増やしたい場合でも、データベースのCPUの性能や、ストレージの容量を簡単なマウス操作のみで増やすることができるため、急なデータ容量の追加にも対応することができます。
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AWSマネージドサービスを有効活用しよう
マネージドサービスを利用すると、ITシステムの運用コストを大幅に軽減し、「柔軟性」や「俊敏性」を得ることで、ビジネスの成長にリソースを投入できるようになります。ITシステムの運用は、脆弱性の判明や緊急アップデートといった、予期せぬ事態が生じ、現場の混乱を招いてしまう場合もありますが、マネージドサービスを利用することでこれらのリスクを回避することができます。
物理サーバからPaaSやSaaSに移行することは、はじめは移行コストが多少なりともかかりますが、中長期的な視点でみると、大幅なコストダウンと企業の競争力強化を実現できるため、是非マネージドサービスを有効活用してみましょう。
まとめ
AWSのマネージドサービスにどのようなものがあり、どのようサービスがあるのかを紹介しました。この記事で紹介したサービス以外にもマネージドサービスは様々なサービスがリリースされており、現在はマネージドサービスだけでもある程度のシステムを構築することが可能になっています。
マネージドサービスを利用すると、ITシステムの運用コストを大幅に削減することができるため、積極的に利用していくといいでしょう。また、利用時に不安がある場合は、ノウハウを豊富に持っているベンダーやコンサルタントに相談してみるといいでしょう。