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AWSへの移行戦略リフト&シフト(Lift&Shift)とは?

リフト&シフト(Lift&Shift)とは?

リフト&シフト(Lift&Shift)とは、ITシステムのAWSへの移行を行う際の戦略の一つです。オンプレミスからクラウドへの移行方式は、主に以下4つの方式があります。

    • リフト&シフト
    • リプラットフォーム
    • 再購入
    • リファクタリング

このうち、リフト&シフトはシステムの構成やアプリケーションをそのままにしながら、クラウド上へ移行する方式で、上記の4方式の中でもっとも簡単な移行方式となります。

システムをクラウドに移行する2つのステップ

オンプレミス上のシステムをクラウドに移行する方法として、基本的には『クラウド上に新規にシステムを開発する』『既存のシステムを移行する』の考え方が存在します。それぞれ、どのような考え方かを記載していきます。

クラウド上に新規にシステムを開発する

既存のシステムをクラウド上に作り直す、という考え方です、システム要件をそのままにしながら、構成をクラウドに沿った構成にする方式です。上記の4つのクラウド移行戦略のうち、『リプラットフォーム』『再購入』『リファクタリング』が該当します。

既存のシステムを移行する

オンプレミス上の既存システムをクラウドにそのままの構成で移行する方式を指します。こちらは、ここで解説する『リフト&シフト』がこの方式に該当します。

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既存のシステムを移行するには、まず「リフト(Lift)」

『リフト&シフト』と、『リプラットフォーム』『リファクタリング』は、移行にかかるコスト、時間で大きな違いが存在します。『リフト&シフト』は、『リプラットフォーム』『リファクタリング』などの方式と比較して大きく難易度が下がるため、移行のコストも期間も低く抑えることができます。

したがって、既存システムを移行する場合には、まずは『リフト&シフト』を検討してみるといいでしょう。

リフト&シフト(Lift&Shiftで)をすすめる理由

まずは『リフト&シフト』を選択するべき理由について、記載していきます。ITの運用を考える上で必要な観点として、『3つのP(People、Process、Product)』という考え方があります。つまり、ITシステムを障害が少なく安全に運用していくためには、人材と、運用プロセス、そして運用を行っていくための優れたツールが必要である、という考え方です。

新しいシステムを一からAWSに作るためには、AWS上のシステムを運用していく人材(People)、AWS上特有の運用手法の検討(Process)、そして運用サービスの選定(Product)の考慮が必要になります。リフト&シフトを採用した場合は、システム構成をほとんどそのまま移行することになるため、既存の運用手法や、人材のスキルをある程度流用することができます。

したがって、PeopleとProcessの整備が不十分でもITシステムを運用していくことが可能になるため、AWS移行後も一定の品質を保つことができます。

しかしマネージドサービスはできる限り利用する

先述の『3つのP(People、Process、Product)』のうち、Productの部分については、マネージドサービスを適切に選択していく必要があります。マネージドサービスは、PaaSやSaaSのように大部分の運用をAWSが行います。つまり、マネージドサービスを選択することで、ITシステムを運用していくツール(Product)の部分に関する負担を軽減することができます。

リフト&シフトは常に正解とは言えない

ただし、オンプレミス上のシステムをクラウドに移行する戦略において、リフト&シフトは常に正解とは言えません。リフト&シフトは、オンプレミス上の構成をそのままAWSに移行することになるため、サーバレスアーキテクチャなどの、いわゆる”クラウドネイティブ”な構成を選択することはできません。

そのため、クラウドのメリットである、「柔軟性」や「俊敏性」を活かし切ることが困難になってしまいます。また、コストや移行後の運用を考えると、無理にクラウドに移行せずに、システム自体をそのままオンプレミス上に保持しておくことや、システム自体を廃棄する、といった選択肢も考えられます。

リフト&シフトが抱えるリスク

リフト&シフトが抱えるリスクとして、大きく分けて『移行ができないリスク』『移行後にコストが上がるリスク』の2点があります。どういうことなのか、具体的に見ていきましょう。

移行ができないリスク

リフト&シフトはオンプレミスの構成のままクラウドにシステムを移行するという方式ですが、オンプレミス環境で利用している製品によっては、AWS上で利用できないものが存在します。例えば、AWSでは共有ディスク構成がとれないので、共有ディスクを利用するクラスタリングソフト等をそのまま利用することができません。

このようにリフト&シフトが選択できず、プロジェクトがとん挫してしまうリスクがあるため、事前の綿密な調査が必要になります。

移行後にコストが上がるリスク

一般的にはクラウドに移行をすると、コストが下がるケースが大半です。しかしながら、場合によってはコストが上昇してしまうケースも存在します。具体的には、『構成によりコストがかかるケース』『ライセンス関連のコストが上昇するケース』が存在します。『構成によりコストがかかるケース』では、既存のシステム構成を踏襲するため、AWS利用料を最適化できず、コストが微減にとどまってしまうか、微増してしまう、というケースが存在します。

『ライセンス関連のコストが上昇するケース』では、オンプレミス環境で利用している製品をそのままクラウドに移行する際には、ライセンス体系が変更されてしまい、かえってライセンス料が高額になる、というケースが考えられます。このように場合によってはオンプレミスで構築するよりもコストがかかってしまうというケースがあり、事前の調査や注意が必要です。

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「シフト(Shift)」で進むクラウドネイティブへの道

クラウドを利用するメリットは、ITシステムの運用を軽減し、「柔軟性」や「俊敏性」を得ることで、ビジネスの成長にリソースを投入できるようになることです。例えばSaaSアプリケーションを開発している企業において、オンプレミスの物理サーバを購入することは直接ビジネスの成長に寄与することではありません。

このような、直接ビジネスにかかわりがない作業を大幅に削減し、本業に人的リソースを注入しながら、「柔軟性」や「俊敏性」で高速にビジネスを成長させることができるのが、クラウドにおけるメリットです。クラウドネイティブなアーキテクチャとは、サーバレスアーキテクチャのように、「柔軟性」や「俊敏性」の効果を最大限に得られるアーキテクチャのことです。既存アプリケーションをクラウドネイティブな構成にするには、”リファクタリング”が必要となり、非常に高いスキル・経験を有したメンバーが必要になります。

短期的に見ると、長い工数や膨大な人件費がかかる場合もありますが、中長期的に見るとコストの削減につなげることができます。

まとめ

リフト&シフトの方式や、クラウド移行戦略における位置づけについて説明していきました。リフト&シフトは実行に向けたコストを低く、移行期間を短くクラウド移行を実施することができます。また、クラウドに詳しい人材が少なくても実行ができ、リフト&シフトを行うなかでクラウドの有識者を育てながら実行していくことも可能です。

一方で、リフトでクラウド移行を終わらせるのではなく、最終的にはリファクタリングをゴールと設定してクラウド移行の計画を立てるといいでしょう。また、リフト&シフトには少なからずリスクもあるため、事前の入念な調査も必要です。万が一、リフト&シフトにおけるクラウド移行に不安がある場合には、経験豊富なベンダー等にコンサルティングを受けることもいいでしょう。ベンダーの技術やノウハウを活用することで、安全にクラウドへの移行を進めることが可能になります。