【イベントレポート】Rancher&DockerでDevOps〜エンタープライズのためのコンテナー基盤セミナー〜
2017年9月13日、コンテナー管理ツールRancherを提供するRancherLabsによるビジネスイベント「Rancher&DockerでDevOps〜エンタープライズのためのコンテナー基盤セミナー〜」が、スタイルズをはじめとするビジネスパートナーの協力で開催されました。
当日のイベントの様子やアンケート結果をレポート形式でお伝えします。
インフラ市場で存在感を広めるコンテナーと国内における開発とインフラの壁について
基調講演として、米国Rancher Labsより来日したCo-Funderシャノン・ウィリアムス氏から、インフラ市場の歴史、Dockerの利用は2015年より爆発的に伸びていることなど、コンテナー市場の広がりについて解説がありました。
その後、Disney、IHMEなど、米国企業のRancherを利用したシステム運用事例についての事例をご紹介。
RancherでDockerコンテナーを管理することにより、WebUIによる運用の実現、開発エンジニアでもインフラ環境を構築をせずとも、開発環境を構築、デプロイ可能になり、実際に運用を行っていることをご説明。
また、様々なクラウドで動かす事もDockeコンテナーで実現可能になり、クラウドであろうと、オンプレミスであろうと動かす事ができるようになるのでマルチクラウドだったり、環境を選ばないというメリットについて解説されました。
弊社、株式会社スタイルズの矢野からは、Rancher のコミュニティ活動の中で、日本国内の開発現場では開発エンジニアが開発環境やテスト環境で困っているという話を聞いた体験談をご紹介。
そのうえで、この問題はまさにDevOpsの課題ですが、DevOpsを企業に浸透させるのは簡単ではない現実・課題についてお話させていただきました。
開発現場と運用現場を統合させるためには、様々な障害がありそれを乗り越えるために、スタイルズでは、DevOpsの『型』をサービスとして提供することをご紹介。
その『型』と、Rancher Partner各社と一緒にサポートを同時に提供することにより、Rancher導入を希望する会社に柔軟に対応が可能となるサービスを提供していく構想について解説しました。
Rancherの国内利用事例
オーアール・ラボ株式会社の辻氏からは、IoT、OSSの研修や、実機演習のトレーニングプログラムサービスについて紹介がありました。
特に「Docker / Rancher研修」は、2日間の予定でRancherの基礎から、Dockerなどのトレーニングも含まれるとのことです。さらに、今後、展示ルームの立ち上げ、およびその展示ルームで実際に動くRancherを体験することができるようになるそうです。
Rancherを活用した映像解析プラットフォームを作っている 株式会社フューチャースタンダード林氏からは、映像解析のプラットフォームを Rancherを上で動かしているという事例について解説いただきました。Rancherで動かすことにより、必要な時だけコンテナーを起動して利用しているとのことです。
Rancherのカタログ(機能群)を利用することで、映像解析アルゴリズム毎にコンテナーを動かすことができ、コンテナー管理が非常に楽で直感的に操作が可能になったとのことで、詳細をご紹介いただきました。
また、クラウド、オンプレを問わずにコンテナーイメージを動かせるのでクラウドやワークロードに最適な場所で実行を確認できるようになったそうです。監視もGrafanaで可能になり、管理コスト、開発コストを下げて迅速にサービスが可能になったという具体的な紹介は、来場者からの関心度も高くなっていました。
コンテナーと仮想マシンのハイブリッド環境構築、開発・運用効率の改善への取り組み
NTTコミュニケーションズの林氏からは、コンテナーの活用は世界中で導入事例が増えており、今後の活用が期待されているとのことを解説いただきました。先日プレスリリースがあったRancherを使ったクラウドサービスを基盤など、Rancherをクラウドのサービスとして提供する仕組みを整えているそうです。
既存のアプリケーションは仮想マシンで動かし、コンテナーとしての基盤もご提供、コンテナーと仮想マシンのハイブリッド環境を提供開始するという展望を解説されました。
株式会社インターネットイニシアティブ(以下IIJ) 寺田氏からは、IIJでは Rancherを使って開発の効率化を図ろうとしているという話がありました。
コンテナーを使うことにより開発から、テスト、デプロイまでの一貫したフローを意識しており、迅速に対応できるようになってきているとのことです。
しかし、監視や、ログの収集については工夫が必要で、PrometheusやFluentdを利用しているとのこと。IIJとしては、Rancher の利用基盤を整えてRancherからホストが自動的に追加できるようになっていることを解説されました。将来的には Terraformを使ったRancher構築ができるようになればと今後の展望をお話いただきました。
社内でコンテナー技術を扱える人がいない場合は
フォーシーズンズ株式会社の市川氏からは、Rancher を導入しようと考えているお客様に向けて、日本国内の会社がRancher Partner NetworkとしてRancherの認定パートナーについて解説いただきました。4社それぞれに特徴があり、各社でコンサルティングや導入支援、研修・教育サービスを実施していくことをお話いただきました。
また、コンテナー技術は、これまでの仮想化技術と違う面があり、新しい技術である為その内容を教えられる人が社内にいるとは限らなくなってきている。そこで、「もっと学びたい、教えて欲しい」というニーズに応える為に、Racherに関するトレーニング体系をまとめていることも発表されました。
初級の研修を11月に実施予定とのことです。
来場者アンケート結果まとめ
アンケートでは、既にRancherを導入しているため具体的な利用方法を検討されている企業もあり、コンテナー市場の盛り上がり、今後の発展について感じることができました。
また参加された顧客の所属する業界としては、事業会社とSI会社の割合が5:5と、ユーザー企業内でシステムの開発、運用の効率化を考えていくという強い情報システム部門も垣間見えました。
また、Rancherを導入する際の重要ポイントは、開発効率化29%、スモールスタート20%、運用費削減19%の順に多く、現場としては、開発効率や運用費削減を実現するためにコンテナーやRancherの導入を検討しているものの、会社としてはスタート時に費用をかけずに、まずは検証のような形でコンテナー環境を段階的に構築していくことが求められている現状も分かりました。
一方で、社内稟議3%、既存ベンダーとの関係4%など、既存のシステム運用の概念が導入時にネックとなることは少ないというアンケート結果となりました。
一方で、コンテナーを扱うにあたりストレージを効率的に活用する方法や、クラウドではなくオンプレミスでコンテナー活用事例を知りたいという声も確認できました。
Rancher 最新情報
2017年9月26日、Rancher LabsはRancher 2.0の技術プレビュー版を公開すると発表されました。この最新リリースにより、単一のRancherインスタンスの下ですべてのKubernetesクラスタを管理することができるようになりました。
ユーザーはRancher Kubernetesディストリビューションを利用し、シンプルで直感的なユーザーエクスペリエンス上で新しいKubernetesクラスタを立ち上げて管理を行うことや、Google Container Engineなどのホスト型コンテナサービスを含め、既存のKubernetesクラスタをインポートすることが可能になります。
●Rancher 2.0 Webページ
https://rancher.com/rancher2-0/(外部サイトにリンクします)